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 『オリエンタル・ファンタジー:アラビアン・ナイトのおとぎ話ときらめく装飾の世界』(パイ・インターナショナル)ができました。アラビアン・ナイトは世界中に親しまれ、多くの絵本がつくられています。<さし絵の黄金時代>といわれる十九世紀末から二十世紀初頭には、特に美しい本が描かれました。そのようなオリエントへのファンタジーの世界をたどってみたいという夢が実現しました。
 この本をつくりながらあらためて感じたのは、アラビアン・ナイトと私が好きな十九世紀末が密接な関係を持っていたことです。エミリー・ブロンテはロンドンで開かれた万国博覧会を見て、愛読していたアラビアン・ナイトのようだと思いました。アラビアン・ナイトは異国の不思議な財宝を集めた万博なのだ、と思うと、なぜ世紀末にアラビアン・ナイトがあれほどブームだったかが頷けます。
 そして、アラビアン・ナイトは、一九七〇年代のフェミニズム運動以後、新しい読み方をされるようになりました。千夜の物語を語ってゆくシェヘラザードをはじめとする魅力的な女性たちを再評価する読み直しがされるようになります。この本でもそれをできるだけとり入れて、アラビアン・ナイトの魅力を現代に甦らせようと意図しました。
 もう一つ発見したのは、ここで紹介するのは西欧が吸収した<オリエンタリズム>(東方趣味)としてのアラビアン・ナイトですが、その源泉であるイスラム文化のすばらしさで、それについてもっと知りたくなりました。
 イスラム建築のアラベスクなどの装飾、ペルシャやインドのミニアチュールなどの面白さが、アラビアン・ナイトを通して、ヨーロッパの<世紀末>に大きな影響を与えている。そのことを少しでも伝えたいと思いました。マルセル・プルーストはアラビアン・ナイトを愛読していました。私がこれまで学んできた世紀末の美術と文学に、アラビアン・ナイトがこれほどまで深く関わっていることに驚かされました。
 この本では、アラビアン・ナイトとミステリー小説や映画との関係など、さまざまなトピックスをちりばめ、現代文化に生きていることを示したいと思いました。そのような多彩で、不思議な世界の物語を楽しんでいただきたいと思います。

近況

 九月に長崎の平戸島に旅をしました。古い時がゆったり流れていて、やさしい島でした。隣の生月島にも橋がかかっていたので、バスで行くことができました。島の人が、橋がかかると、島から多くのものが流れだしていく、といっていました。
 十一月に、姫路と龍野に行きました。姫路から二十分ほどの龍野は、小さな城下町の雰囲気が残っていて、日本にまだこんな町がある、とうれしくなるようなところでした。
 十一月九日に筑波大で「モダン・ガールの百年」という講演をしました。大学院の学生による自主企画で、私の古い話を若い人たちが歓迎してくれました。二次会でも楽しくおしゃべりをして、終電に乗りおくれそうになりました。この日、アメリカの大統領選があり、モダン・ガールの百年の歴史の時に、アメリカ初の女性大統領が登場したという話をしようとしましたが、トランプが当選し、話せませんでした。
 ほとんどの予想が通用しなかったという大変動、大混乱の時代が来つつあるようです。書くという私の仕事もどうなっていくのでしょうか。最近書いたテーマもさまざまです。
 ゼロックスの電子版『グラフィケーション』に「ポップカルチャーとしての<海賊>」を書きました。映画『パイレーツ・オブ・カビリアン』からコミック『ワンピース』まで、なぜ<海賊>イメージがはやるのか。そのことを紙ではなく、ネットに書くことに微妙な思いを抱きました。
 資生堂ギャラリーで「資生堂の香水百年」を記念して香水びんの展覧会が開かれました。そのカタログに香水の百年の歴史を書きました。このところ<百年>という時間の区切りで考える機会が多くなりました。モダン・ガールの話もそれに重なっています。
 このごろ、また映画について書くようになりました。しばらく映画を離れていましたが、また映画を見るように誘ってくれる人があらわれて、うれしいことです。一九七〇年代によく見たルキノ・ヴィスコンティの映画も、修復されてリバイバル上映されるようになりました。『家族の肖像』も新版が岩波ホールで上映されるので、そのプログラムを書きました。
 テレンス・マリックの新作『聖杯たちの騎士』についても書きました。聖杯伝説やカリフォルニア文化が重ねられて、映像がすばらしい。このような映画がつくられることは、この混乱した時代にもまだまだユニークな作品が可能であるという希望を抱かせます。
 私が次にやりたいと思っているのは、ピアズリーからクリムトにいたる世紀末デカダンスの幻想美術のまとめです。マリオ・プラツの『ロマンチック・アゴニー』やフイリップ・ジュリアンの『世紀末の夢』などのカラー版のような本をつくりたいと夢見ています。

オリエンタル・ファンタジー:アラビアン・ナイトのおとぎ話ときらめく装飾の世界

オリエンタル・ファンタジー:
アラビアン・ナイトのおとぎ話ときらめく装飾の世界

アルフォンス・ミュシャの世界――2つのおとぎの国への旅

アルフォンス・ミュシャの世界
――2つのおとぎの国への旅

北欧の挿絵とおとぎ話の世界

世界の美しい本

北欧の挿絵とおとぎ話の世界

マティスの切り絵と挿絵の世界

北欧の挿絵とおとぎ話の世界

北欧の挿絵とおとぎ話の世界

ロシア・アヴァンギャルドのデザイン

ロシア・アヴァンギャルドのデザイン
未来を夢見るアート

チェコの挿絵とおとぎ話の世界

チェコの挿絵とおとぎ話の世界

世界の雪景色

世界の雪景色

世界陰謀全史

世界陰謀全史


ハリー・クラーク

ハリー・クラーク


魔女の世界史──女神信仰からアニメまで

魔女の世界史 ── 女神信仰からアニメまで

1914年: 100年前から今を考える

1914年: 100年前から今を考える





世紀末の光と闇の魔術師 オーブリー・ビアズリー

世紀末の光と闇の魔術師 オーブリー・ビアズリー

 

ヨーロッパの装飾と文様

ヨーロッパの装飾と文様

 

神話・伝説とおとぎ話-ヨーロッパの図像

神話・伝説とおとぎ話-ヨーロッパの図像

 

万国博覧会の二十世紀

万国博覧会の二十世紀

 

ウィリアム・モリス - クラシカルで美しいパターンとデザイン

ウィリアム・モリス
- クラシカルで美しいパターンとデザイン

 

あいさつ

 海野弘ワールドにようこそ。長いこと、さまざまなテーマを書いてきました。自分がどこを歩いているのかわからなくなる時があるほどです。
 一つの区切りとして、自分の世界を整理し、その見取り図をつくってみることにしました。そこでは、情報の三つの柱を伝えたいと思います。
 一つはこれまでやってきた仕事をたどることです。単行本にまとめられたものを中心に、まだ本に入っていないものについても拾ってみたいと思います。

あいさつタイトル

 二つ目は今やっている仕事についてです。新聞や雑誌の連載など書く仕事だけでなく、講演やインタビュー、座談会、そして取材の旅といった仕事についても触れるつもりです。
 三つ目はこれからどこに向かうかについてです。決まっているだけではなく、長いこと考えてきて、なかなか実現しない企画や、最近ふと思いついたテーマなど、私の夢についても語りたいと思います。
 私の旅してきた世界は私だけのものではなく、多くの先人から贈られたものです。私もまたそれを次の世代に送っていきたいと願っています。そのためにこの小さな窓が役立てばうれしいのですが。

署名

お知らせ

2011年7月29日

 以前に河出書房新社から出した『江戸ふしぎ草子』のシリーズ(全六巻)が今度、平凡社ライブラリーに入ることになりました。秋には第一冊が出る予定です。
 このシリーズは朗読会やラジオでの朗読などで読ませてほしいという依頼をよく受けます。私としても愛着のある作品なので、新しい形で出ることになり、楽しみにしています。

2010年9月16日

『名門大学スキャンダル史:あぶない教授たちの素顔』(平凡社新書)が刊行されました。

近況

この夏は、カイ・ニールセンという挿絵画家について書いていました。アーサー・ラッカムやエドモンド・デュラックと並んで、二十世紀初頭の挿絵の黄金時代をつくったイラストレーターの一人です。ひさしく忘れられていましたが、このところ再発見、再評価されています。その名品集をマール社から出すことになり、解説を書きました。『世紀末のイラストレーターたち』以来の、ひさびさのイラストレーター論なので、とてもうれしい仕事でした。
『ファンタジー文学入門』(ポプラ社)を書いた時、また、ファンタジーのイラストレーションのことを書きたいと思っていたところでした。ニールセンの絵本もかなり集まってきたので、どこかのギャラリーで絵本展をやりたいな、と夢をふくらませています。
東京新聞(2010年9月6日号)に、「古賀春江展」(神奈川県立近代美術館 葉山)について書きました。古賀も一種のファンタジー画家といえるでしょう。
今、書いているのは『おじさん、おばさん論』(幻戯書房)です。ニュートンからジャック・タチの『ぼくの伯父さん』まで、百人以上のおじさん・おばさんが登場します。

2010年8月31日

語りの会 ぼてふり 第六回公演にて、海野弘 作『江戸妖かし草子』より「女目医者」が上演されます。
日時:2010年9月10日(金)
    昼の部:14:30開演
    夜の部:16:30開演
場所:深川江戸資料館・小劇場
入場料:\2,000
問い合わせ:語りの会 ぼてふり事務局 神橋武典
    03-3337-9307
    090-1556-2009
    botefuri@nifty.com

2010年4月21日

『秘密結社の時代 鞍馬天狗で読み解く百年』(河出ブックス)が刊行されました。
巻末に時代をたどるのに便利な年表を入れ、挿絵などもちりばめた楽しい本になっています。

『花に生きる-小原豊雲伝』(平凡社)も5月刊行の予定です。
久生十蘭、大佛次郎、そして小原豊雲と、近代史の人物評伝がつづきました。
よろしくお願いします。

2010年3月12日

以下、書影を追加しました。 『スキャンダルの世界史』
『イリュージョン デザイン:知覚 想像力 空間』
『ジャズ・スタンダード100:名曲で読むアメリカ』
『シャンハイモダン:上海摩登』
『モダン都市文学Ⅰ:モダン東京案内』
『モダン都市文学Ⅵ:機械のメトロポリス』
『音楽の万華鏡②:一九二〇年代の音楽』
『海野弘の街あるき館さがし』
『久生十蘭 『魔都』『十字街』解読』
『現代美術:アール・ヌーヴォーからポストモダンまで』
『崇拝からレイプへ:映画の女性史』
『伝説の風景を旅して』
『秘密結社の日本史』 よろしくお願いします。

2010年2月22日

Websiteをオープンしました。
よろしくお願いします。
雑誌掲載

「旅サライ」(小学館) 2010年2月26日発売

「必ず訪ねたい個人美術館」に書いています。

『小原流挿花』

「日本史の旅人」を連載中。
新刊

ロシアの挿絵とおとぎ話の世界

パイインターナショナル 2012年12月21日刊行

流線の挿絵画家 ジェシー・キング

マール社 2012年10月29日刊行

おとぎ話の古書案内

パイインターナショナル 2012年10月19日刊行

プルーストの浜辺
-「失われた時を求めて」再読

柏書房 2012年7月刊行

二十世紀美術 一九〇〇~二〇一〇

新曜社 2012年7月刊行

スキャンダルの世界史

文藝春秋 2012年5月10日刊行

野の花の本 ボタニカル・アートと花のおとぎ話

パイインターナショナル 2012年4月30日刊行

夢見る挿絵の黄金時代
-フランスのファッション・イラスト

パイインターナショナル 2012年4月30日刊行
新聞掲載

東京新聞(2010年9月6日号)

「古賀春江展」(神奈川県立近代美術館 葉山)についての記事が掲載されました。

朝日新聞 2010年1月24日朝刊

『スキャンダルの世界史』の書評が掲載されました。

日本経済新聞 2010年1月17日朝刊

『スキャンダルの世界史』の書評が掲載されました

日本経済新聞 夕刊

「プロムナード」に、2009年7月~12月まで毎週木曜日にエッセイを連載。
講演

2013年4月13日(土)午後2時

東京六本木の新美術館で、「カリフォルニア文化とデザイン」について話します。→詳しくはこちら

2013年3月16日(土)午後2時

北海道立近代美術館で「魅惑の世紀末 アール・ヌーヴォーの世界」を話します。→詳しくはこちら

2010年1月末

石川県立九谷焼研修所でモダン・デザイン史の講義を予定しています。
構想メモ

構想がまとまってはいないが、書く約束はしているもの~

『志賀直哉と奈良芸術村』
 志賀直哉は1925~1938年まで奈良の高畑に住み、そのまわりに作家や画家が集まり、芸術サロンができていた。そこで奈良<天平>芸術が発見されてゆく。そのアーティスト・コロニー(芸術家村)の物語を書いてみたい。
『斜めに橋を架ける-おじさん、おばさん論』
 日経新聞の「プロムナード」に書いたのだが、文化や知識は、親から子へという直線によって継がれるだけでなく、おじさんやおばさんという斜線によって伝がれることが重要ではないかと思う。おじやおばによる文化の伝達によって、異文化が注入され、豊かになるのだ。文化がそれぞれ孤立している現代において、おじさん・おばさんの役割を再評価したい。

まだ漠然としたアイデアだけで、いつか書いてみたいと思っている企画。
止めどなくあるうちの、いくつか~

『ニューヨーク1950年代』
 1920年代のパリに代わって、戦後のニューヨークは世界の先端となった。ビート文学、抽象表現主義のアート、モダン・ジャズの三本の柱によって、ニューヨークを書きたい。
『プルーストの浜辺』
 『プルーストの部屋』とペアになる本として、プルーストと1900年のノルマンディーの浜辺について書きたい。

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