ホーム

 『366日 絵のなかの部屋をめぐる旅』(パイインターナショナル)が出ました。<366日>シリーズの、<風景画>、<物語絵>につづく、三冊目の<室内画>編です。
 <部屋>というテーマは、今のステイ・ホームの時代にふさわしい、などといわれますが、私にとっては、昔から興味があった、私の原点ともいえる世界です。最初に調べはじめた世紀末アール・ヌーヴォーは、室内装飾を中心としたスタイルでした。
 十九世紀末に成立してくる<室内空間>を調べているうちに、マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』に出会いました。<部屋>という空間を流れてゆく時間をプルーストは甦らせようとしています。この小説を<部屋>という視点で読んでみたいという思いで、『プルーストの部屋』(中央公論社)を書きました。ふりかえってみると、『書斎の文化史』、『部屋の宇宙誌』、『もうひとつの部屋』など、部屋の本をいくつか書いてきました。
 このところしばらく、<部屋>というテーマを忘れていたように思いますが、『366日 絵のなかの部屋をめぐる旅』で、またなつかしい<部屋>にもどってきました。世界中の美術館から部屋を描いた絵を集めて、それをめぐっていくという、私にとってとても楽しい本になりました。
 このシリーズの特徴は、<風景画>、<物語画>、<室内画>というくくり方により、これまで美術史であまりとりあげられなかった画家の絵が入ってくることです。北欧やロシアなど、美術史の本流からはそれた国々の画家の絵が、私にとって、とても新鮮でした。
 そして<部屋>という空間は、人間に最も親しいものです。十九世紀末、フランスでは、ヴュィヤール、ボナール、ヴァロットンなどの画家が、部屋でくつろぐ家族のシーンを描き、<アンチミスト>(親密派)と呼ばれました。見慣れた、平凡な生活を描いた絵はなぜこんなにも面白いのだろう、と思いながら、この本に、彼らの絵をいっぱい入れることができました。
 <部屋>という、日常的な、小さな、私の世界を描いた絵には、美術的な美しさだけではなく、<私>のさまざまな思い、夢が見えるように思います。私は、絵のなかの部屋を、美術だけにこだわらない、人間的な、くつろいだ気分でめぐっていくことにしました。
 そのような気分が、この本を読んでくださる読者に伝わり、部屋の旅を楽しんでくださることを願っています。

このごろのこと

 <部屋>は、私にとってなつかしいテーマでした。この本を書くために、ずっと前に集めた資料を書庫でさがしながら、それを集めていた古い時代を思い出していました。もう縁がなくなった、と思っていたテーマに再会し、またそれについて書くことができるのは、うれしいことです。なんだか、ずっと同じところをぐるぐるまわっていたようにも思えるのですが。
 たまたま、日本経済新聞で、エッセイを頼まれたので、『366日 絵のなかの部屋をめぐる旅』を書いていたことを書かせてもらいました。「部屋をめぐり、時を旅する」(二〇二一年八月一日)と題しました。
 古いテーマにもどるといえば、最近、韓国の出版社から、以前出した『ダイエットの歴史』(新書館)を訳したいといってきたのでおどろきました。この本は、一九七〇年代からの<ニューエイジ>といわれる精神運動の中で、ダイエットの方法が身体的から精神的なものに変わったことを書いたものです。
 このところ、<ニューエイジ>が復活し、陰謀論がはやっているようです。私は、『陰謀の世界史』(文藝春秋)や『世紀末シンドローム――ニューエイジの光と闇』(新曜社)を書いた頃のことを思い出しました。またそのような状況がもどってきているのでしょうか。
 それぞれの部屋に分かれ、孤立していくような時代の中で、ワルター・ベンヤミンは、部屋と部屋をつなぐパッサージ(回路)をパリの街でさがそうとしました。私も、さまざまな<部屋>(テーマ)をめぐりながら、それらをつなぐパッサージを見つけたいと思っています。

366日 絵のなかの部屋をめぐる旅

366日 絵のなかの部屋をめぐる旅

366日 物語のある絵画

366日 物語のある絵画

ロンドンの誘惑 1970's ロンドン・カルチャーの世界

ロンドンの誘惑 1970's ロンドン・カルチャーの世界

武蔵野マイウェイ

武蔵野マイウェイ

366日 風景画をめぐる旅

366日 風景画をめぐる旅

華麗なる「バレエ・リュス」と舞台芸術の世界

華麗なる「バレエ・リュス」と舞台芸術の世界
-ロシア・バレエとモダン・アート-

Another Room もうひとつの部屋

Another Room もうひとつの部屋

映画は千の目をもつ

映画は千の目をもつ



おとぎ話のモノクロームイラスト傑作選

おとぎ話のモノクロームイラスト傑作選


グスタフ・クリムトの世界――女たちの黄金迷宮

グスタフ・クリムトの世界――女たちの黄金迷宮


海賊の文化史様

海賊の文化史

日本の装飾と文様

日本の装飾と文様


世界の幻想耽美

世界の幻想耽美

イギリス 野の花図鑑

イギリス 野の花図鑑

ファンタジーとSF・スチームパンクの世界

ファンタジーとSF・スチームパンクの世界

ヨーロッパの図像 花の美術と物語

ヨーロッパの図像 花の美術と物語

秘密結社の世界史~フリーメーソンからトランプまで、その謎と陰謀~

秘密結社の世界史
~フリーメーソンからトランプまで、その謎と陰謀~

ロシア・アヴァンギャルドのデザイン

ロシアの世紀末――〈銀の時代〉への旅

オリエンタル・ファンタジー:アラビアン・ナイトのおとぎ話ときらめく装飾の世界

ヨーロッパの幻想美術
─世紀末デカダンスとファム・ファタルたち

オリエンタル・ファンタジー:アラビアン・ナイトのおとぎ話ときらめく装飾の世界

オリエンタル・ファンタジー:
アラビアン・ナイトのおとぎ話ときらめく装飾の世界

アルフォンス・ミュシャの世界――2つのおとぎの国への旅

アルフォンス・ミュシャの世界
――2つのおとぎの国への旅

北欧の挿絵とおとぎ話の世界

世界の美しい本

北欧の挿絵とおとぎ話の世界

マティスの切り絵と挿絵の世界

あいさつ

 海野弘ワールドにようこそ。長いこと、さまざまなテーマを書いてきました。自分がどこを歩いているのかわからなくなる時があるほどです。
 一つの区切りとして、自分の世界を整理し、その見取り図をつくってみることにしました。そこでは、情報の三つの柱を伝えたいと思います。
 一つはこれまでやってきた仕事をたどることです。単行本にまとめられたものを中心に、まだ本に入っていないものについても拾ってみたいと思います。

あいさつタイトル

 二つ目は今やっている仕事についてです。新聞や雑誌の連載など書く仕事だけでなく、講演やインタビュー、座談会、そして取材の旅といった仕事についても触れるつもりです。
 三つ目はこれからどこに向かうかについてです。決まっているだけではなく、長いこと考えてきて、なかなか実現しない企画や、最近ふと思いついたテーマなど、私の夢についても語りたいと思います。
 私の旅してきた世界は私だけのものではなく、多くの先人から贈られたものです。私もまたそれを次の世代に送っていきたいと願っています。そのためにこの小さな窓が役立てばうれしいのですが。

署名

お知らせ

2011年7月29日

 以前に河出書房新社から出した『江戸ふしぎ草子』のシリーズ(全六巻)が今度、平凡社ライブラリーに入ることになりました。秋には第一冊が出る予定です。
 このシリーズは朗読会やラジオでの朗読などで読ませてほしいという依頼をよく受けます。私としても愛着のある作品なので、新しい形で出ることになり、楽しみにしています。

2010年9月16日

『名門大学スキャンダル史:あぶない教授たちの素顔』(平凡社新書)が刊行されました。

近況

この夏は、カイ・ニールセンという挿絵画家について書いていました。アーサー・ラッカムやエドモンド・デュラックと並んで、二十世紀初頭の挿絵の黄金時代をつくったイラストレーターの一人です。ひさしく忘れられていましたが、このところ再発見、再評価されています。その名品集をマール社から出すことになり、解説を書きました。『世紀末のイラストレーターたち』以来の、ひさびさのイラストレーター論なので、とてもうれしい仕事でした。
『ファンタジー文学入門』(ポプラ社)を書いた時、また、ファンタジーのイラストレーションのことを書きたいと思っていたところでした。ニールセンの絵本もかなり集まってきたので、どこかのギャラリーで絵本展をやりたいな、と夢をふくらませています。
東京新聞(2010年9月6日号)に、「古賀春江展」(神奈川県立近代美術館 葉山)について書きました。古賀も一種のファンタジー画家といえるでしょう。
今、書いているのは『おじさん、おばさん論』(幻戯書房)です。ニュートンからジャック・タチの『ぼくの伯父さん』まで、百人以上のおじさん・おばさんが登場します。

2010年8月31日

語りの会 ぼてふり 第六回公演にて、海野弘 作『江戸妖かし草子』より「女目医者」が上演されます。
日時:2010年9月10日(金)
    昼の部:14:30開演
    夜の部:16:30開演
場所:深川江戸資料館・小劇場
入場料:\2,000
問い合わせ:語りの会 ぼてふり事務局 神橋武典
    03-3337-9307
    090-1556-2009
    botefuri@nifty.com

2010年4月21日

『秘密結社の時代 鞍馬天狗で読み解く百年』(河出ブックス)が刊行されました。
巻末に時代をたどるのに便利な年表を入れ、挿絵などもちりばめた楽しい本になっています。

『花に生きる-小原豊雲伝』(平凡社)も5月刊行の予定です。
久生十蘭、大佛次郎、そして小原豊雲と、近代史の人物評伝がつづきました。
よろしくお願いします。

2010年3月12日

以下、書影を追加しました。 『スキャンダルの世界史』
『イリュージョン デザイン:知覚 想像力 空間』
『ジャズ・スタンダード100:名曲で読むアメリカ』
『シャンハイモダン:上海摩登』
『モダン都市文学Ⅰ:モダン東京案内』
『モダン都市文学Ⅵ:機械のメトロポリス』
『音楽の万華鏡②:一九二〇年代の音楽』
『海野弘の街あるき館さがし』
『久生十蘭 『魔都』『十字街』解読』
『現代美術:アール・ヌーヴォーからポストモダンまで』
『崇拝からレイプへ:映画の女性史』
『伝説の風景を旅して』
『秘密結社の日本史』 よろしくお願いします。

2010年2月22日

Websiteをオープンしました。
よろしくお願いします。
雑誌掲載

「旅サライ」(小学館) 2010年2月26日発売

「必ず訪ねたい個人美術館」に書いています。

『小原流挿花』

「日本史の旅人」を連載中。
新刊

ロシアの挿絵とおとぎ話の世界

パイインターナショナル 2012年12月21日刊行

流線の挿絵画家 ジェシー・キング

マール社 2012年10月29日刊行

おとぎ話の古書案内

パイインターナショナル 2012年10月19日刊行

プルーストの浜辺
-「失われた時を求めて」再読

柏書房 2012年7月刊行

二十世紀美術 一九〇〇~二〇一〇

新曜社 2012年7月刊行

スキャンダルの世界史

文藝春秋 2012年5月10日刊行

野の花の本 ボタニカル・アートと花のおとぎ話

パイインターナショナル 2012年4月30日刊行

夢見る挿絵の黄金時代
-フランスのファッション・イラスト

パイインターナショナル 2012年4月30日刊行
新聞掲載

東京新聞(2010年9月6日号)

「古賀春江展」(神奈川県立近代美術館 葉山)についての記事が掲載されました。

朝日新聞 2010年1月24日朝刊

『スキャンダルの世界史』の書評が掲載されました。

日本経済新聞 2010年1月17日朝刊

『スキャンダルの世界史』の書評が掲載されました

日本経済新聞 夕刊

「プロムナード」に、2009年7月~12月まで毎週木曜日にエッセイを連載。
講演

2013年4月13日(土)午後2時

東京六本木の新美術館で、「カリフォルニア文化とデザイン」について話します。→詳しくはこちら

2013年3月16日(土)午後2時

北海道立近代美術館で「魅惑の世紀末 アール・ヌーヴォーの世界」を話します。→詳しくはこちら

2010年1月末

石川県立九谷焼研修所でモダン・デザイン史の講義を予定しています。
構想メモ

構想がまとまってはいないが、書く約束はしているもの~

『志賀直哉と奈良芸術村』
 志賀直哉は1925~1938年まで奈良の高畑に住み、そのまわりに作家や画家が集まり、芸術サロンができていた。そこで奈良<天平>芸術が発見されてゆく。そのアーティスト・コロニー(芸術家村)の物語を書いてみたい。
『斜めに橋を架ける-おじさん、おばさん論』
 日経新聞の「プロムナード」に書いたのだが、文化や知識は、親から子へという直線によって継がれるだけでなく、おじさんやおばさんという斜線によって伝がれることが重要ではないかと思う。おじやおばによる文化の伝達によって、異文化が注入され、豊かになるのだ。文化がそれぞれ孤立している現代において、おじさん・おばさんの役割を再評価したい。

まだ漠然としたアイデアだけで、いつか書いてみたいと思っている企画。
止めどなくあるうちの、いくつか~

『ニューヨーク1950年代』
 1920年代のパリに代わって、戦後のニューヨークは世界の先端となった。ビート文学、抽象表現主義のアート、モダン・ジャズの三本の柱によって、ニューヨークを書きたい。
『プルーストの浜辺』
 『プルーストの部屋』とペアになる本として、プルーストと1900年のノルマンディーの浜辺について書きたい。

ページトップへ戻る