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 『ファンタジーとSF・スチームパンクの世界』(パイ・インタナショナル)が出ました。おもちゃ箱をひっくり返したようなにぎやかな本になりました。<ゴシック>と<スチームパンク>という二つのことばが気になっていました。<ゴシック>または<ゴス>は、十九世紀に、ゴシック・リヴァイヴァルとして、中世ゴシックのスタイルを当時(十九世紀)に重ねて、世界を見ようとしたことにはじまります。そのようなゴシック趣味は今もあらわれてきます。
 <スチームパンク>は、逆SFともいわれ、SFが未来を仮想するのに対して、過去にタイム・トラベルします。特に<スチーム(蒸気)>の時代、つまり十九世紀(またはその大部分を含めるヴィクトリア朝)に現代を重ねます。
 つまりどちらも十九世紀(特にヴィクトリア朝)に結びついています。<ゴシック>と<スチームパンク>はヴィクトリア朝の上で出会っているのです。
 私は十九世紀末のアール・ヌーヴォー・スタイルに興味を持ってきました。そして、その前後の時代に興味を広げるようになり、<十九世紀>をあらためて全体としてとらえてみたいと思うようになりました。
 <ゴシック>と<スチームパンク>によって十九世紀を眺めわたしたい、というのがこの本の発想です。
 二つのことばをつなぐ流れとして、<ロマン主義>をまず調べることにしました。<ロマン主義>によって、私の(個人的な)想像力が解放されます。<ロマン主義>は、モダン・アートの出発点だったのではないだろうか。<ロマン主義>、<世紀末象徴主義>として現代の<パンク・アート>にいたる美術史を書いてみたい、といった夢がふくらんできました。
 そのような、もう一つの美術史が書けたかどうかはわからないが、これまでばらばらに気になっていたアート、または反アートなどが<ゴシック>・<スチームパンク>の流れにつながってくるような気がしました。この本はそのような、私の中であてもなく浮遊していたイメージをつめこむことができたように思えます。
 ヴィクトリア朝は、ファンタジーと機械が共存することができた時代です。その雑多なイメージのパノラマをこの本で楽しんでほしいと思います。
 <ゴシック>と<スチームパンク>の多様なイメージのパノラマの中に、新しい<美術史>を見たい。これまで美術史であつかうことのなかったガラクタをそこに参加させたい。それらを通して、現在と、この世界を新しく見たい。そのような夢を読者に届けたい、と願っています。
 あらためて、このような無謀な本をまとめてくれた人たちに感謝します。私の、とめどなく脱線するイメージや注文を聞いてくれて、私が予想したより、ずっと豊かで面白い図版を集めてくれ、それを見事に構成してくれた人たちのおかげで、いい本になりました。

このごろのこと

 岩手県を旅しました。このところ東北を歩いています。今回は盛岡を訪ねました。前回は青森県で、南部氏が支配していました。南部氏は勢力を岩手県に拡大し、盛岡に城を築いて、移ってきます。そんな城下町盛岡を歩きまわりました。
 その次に遠野に行きました。柳田国男の『遠野物語』で知られ、民話のふるさととして知られています。昔一度いったことがあるのですが、野原を歩きまわったという記憶がぼんやりあるだけです。
 今度知ったのですが、遠野は南部氏の分家が移ってきてつくった小さな城下町です。昔話が残る村といったイメージがあったのですが、れっきとした城下町で、かなりにぎわっていたようです。
 遠野は盛岡から東北本線で新花巻に行き、そこから釜石線に乗っていきます。今回も大雨洪水警報が出て、釜石線が止まり、行くのに苦労しました。なんとかたどり着き、城下町としての遠野を見てから、『遠野物語』の舞台のいくつかを案内してもらいました。山裾の方にデンデラ野というところがあります。
 六十歳になるとここに捨てられたんだよ、と案内してくれた人がしんみりいいました。「でも今だって、年寄りは辛いから、昔よりよくなったとはいえないかもしれない」といわれ、返事ができません。今回、『遠野物語』を読み直したのですが、のんびりした民話というより、津波、大洪水といった災害、人殺しの犯罪の話が入っていて、なんだか昔の話とはいえないような気がしてきました。地震や津波の被害に今も苦しむ東北にとって、これらの物語は過去のなつかしい話とだけいいきれないのではないか、と思いました。
 夕暮れのたんぼ道をトボトボと歩きながら、『遠野物語』の世界に迷いこんでいくようでした。

 『小原豊雲と小原流の建築群――小原豊雲と清家清の世界』という講演会(2017年11月11日 神戸市立御影公会堂)に呼ばれました。『花に生きる――小原豊雲伝』(平凡社)を以前に書いた縁です。小原流を大成させた小原豊雲の生涯を調べて、神戸を歩いたことがなつかしく思い出されます。

ファンタジーとSF・スチームパンクの世界

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ヨーロッパの図像 花の美術と物語

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秘密結社の世界史~フリーメーソンからトランプまで、その謎と陰謀~

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~フリーメーソンからトランプまで、その謎と陰謀~

ロシア・アヴァンギャルドのデザイン

ロシアの世紀末――〈銀の時代〉への旅

オリエンタル・ファンタジー:アラビアン・ナイトのおとぎ話ときらめく装飾の世界

ヨーロッパの幻想美術
─世紀末デカダンスとファム・ファタルたち

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アルフォンス・ミュシャの世界――2つのおとぎの国への旅

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――2つのおとぎの国への旅

北欧の挿絵とおとぎ話の世界

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マティスの切り絵と挿絵の世界

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未来を夢見るアート

チェコの挿絵とおとぎ話の世界

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世界の雪景色

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世界陰謀全史

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ハリー・クラーク

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魔女の世界史──女神信仰からアニメまで

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1914年: 100年前から今を考える

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世紀末の光と闇の魔術師 オーブリー・ビアズリー

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ヨーロッパの装飾と文様

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神話・伝説とおとぎ話-ヨーロッパの図像

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万国博覧会の二十世紀

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ウィリアム・モリス - クラシカルで美しいパターンとデザイン

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あいさつ

 海野弘ワールドにようこそ。長いこと、さまざまなテーマを書いてきました。自分がどこを歩いているのかわからなくなる時があるほどです。
 一つの区切りとして、自分の世界を整理し、その見取り図をつくってみることにしました。そこでは、情報の三つの柱を伝えたいと思います。
 一つはこれまでやってきた仕事をたどることです。単行本にまとめられたものを中心に、まだ本に入っていないものについても拾ってみたいと思います。

あいさつタイトル

 二つ目は今やっている仕事についてです。新聞や雑誌の連載など書く仕事だけでなく、講演やインタビュー、座談会、そして取材の旅といった仕事についても触れるつもりです。
 三つ目はこれからどこに向かうかについてです。決まっているだけではなく、長いこと考えてきて、なかなか実現しない企画や、最近ふと思いついたテーマなど、私の夢についても語りたいと思います。
 私の旅してきた世界は私だけのものではなく、多くの先人から贈られたものです。私もまたそれを次の世代に送っていきたいと願っています。そのためにこの小さな窓が役立てばうれしいのですが。

署名

お知らせ

2011年7月29日

 以前に河出書房新社から出した『江戸ふしぎ草子』のシリーズ(全六巻)が今度、平凡社ライブラリーに入ることになりました。秋には第一冊が出る予定です。
 このシリーズは朗読会やラジオでの朗読などで読ませてほしいという依頼をよく受けます。私としても愛着のある作品なので、新しい形で出ることになり、楽しみにしています。

2010年9月16日

『名門大学スキャンダル史:あぶない教授たちの素顔』(平凡社新書)が刊行されました。

近況

この夏は、カイ・ニールセンという挿絵画家について書いていました。アーサー・ラッカムやエドモンド・デュラックと並んで、二十世紀初頭の挿絵の黄金時代をつくったイラストレーターの一人です。ひさしく忘れられていましたが、このところ再発見、再評価されています。その名品集をマール社から出すことになり、解説を書きました。『世紀末のイラストレーターたち』以来の、ひさびさのイラストレーター論なので、とてもうれしい仕事でした。
『ファンタジー文学入門』(ポプラ社)を書いた時、また、ファンタジーのイラストレーションのことを書きたいと思っていたところでした。ニールセンの絵本もかなり集まってきたので、どこかのギャラリーで絵本展をやりたいな、と夢をふくらませています。
東京新聞(2010年9月6日号)に、「古賀春江展」(神奈川県立近代美術館 葉山)について書きました。古賀も一種のファンタジー画家といえるでしょう。
今、書いているのは『おじさん、おばさん論』(幻戯書房)です。ニュートンからジャック・タチの『ぼくの伯父さん』まで、百人以上のおじさん・おばさんが登場します。

2010年8月31日

語りの会 ぼてふり 第六回公演にて、海野弘 作『江戸妖かし草子』より「女目医者」が上演されます。
日時:2010年9月10日(金)
    昼の部:14:30開演
    夜の部:16:30開演
場所:深川江戸資料館・小劇場
入場料:\2,000
問い合わせ:語りの会 ぼてふり事務局 神橋武典
    03-3337-9307
    090-1556-2009
    botefuri@nifty.com

2010年4月21日

『秘密結社の時代 鞍馬天狗で読み解く百年』(河出ブックス)が刊行されました。
巻末に時代をたどるのに便利な年表を入れ、挿絵などもちりばめた楽しい本になっています。

『花に生きる-小原豊雲伝』(平凡社)も5月刊行の予定です。
久生十蘭、大佛次郎、そして小原豊雲と、近代史の人物評伝がつづきました。
よろしくお願いします。

2010年3月12日

以下、書影を追加しました。 『スキャンダルの世界史』
『イリュージョン デザイン:知覚 想像力 空間』
『ジャズ・スタンダード100:名曲で読むアメリカ』
『シャンハイモダン:上海摩登』
『モダン都市文学Ⅰ:モダン東京案内』
『モダン都市文学Ⅵ:機械のメトロポリス』
『音楽の万華鏡②:一九二〇年代の音楽』
『海野弘の街あるき館さがし』
『久生十蘭 『魔都』『十字街』解読』
『現代美術:アール・ヌーヴォーからポストモダンまで』
『崇拝からレイプへ:映画の女性史』
『伝説の風景を旅して』
『秘密結社の日本史』 よろしくお願いします。

2010年2月22日

Websiteをオープンしました。
よろしくお願いします。
雑誌掲載

「旅サライ」(小学館) 2010年2月26日発売

「必ず訪ねたい個人美術館」に書いています。

『小原流挿花』

「日本史の旅人」を連載中。
新刊

ロシアの挿絵とおとぎ話の世界

パイインターナショナル 2012年12月21日刊行

流線の挿絵画家 ジェシー・キング

マール社 2012年10月29日刊行

おとぎ話の古書案内

パイインターナショナル 2012年10月19日刊行

プルーストの浜辺
-「失われた時を求めて」再読

柏書房 2012年7月刊行

二十世紀美術 一九〇〇~二〇一〇

新曜社 2012年7月刊行

スキャンダルの世界史

文藝春秋 2012年5月10日刊行

野の花の本 ボタニカル・アートと花のおとぎ話

パイインターナショナル 2012年4月30日刊行

夢見る挿絵の黄金時代
-フランスのファッション・イラスト

パイインターナショナル 2012年4月30日刊行
新聞掲載

東京新聞(2010年9月6日号)

「古賀春江展」(神奈川県立近代美術館 葉山)についての記事が掲載されました。

朝日新聞 2010年1月24日朝刊

『スキャンダルの世界史』の書評が掲載されました。

日本経済新聞 2010年1月17日朝刊

『スキャンダルの世界史』の書評が掲載されました

日本経済新聞 夕刊

「プロムナード」に、2009年7月~12月まで毎週木曜日にエッセイを連載。
講演

2013年4月13日(土)午後2時

東京六本木の新美術館で、「カリフォルニア文化とデザイン」について話します。→詳しくはこちら

2013年3月16日(土)午後2時

北海道立近代美術館で「魅惑の世紀末 アール・ヌーヴォーの世界」を話します。→詳しくはこちら

2010年1月末

石川県立九谷焼研修所でモダン・デザイン史の講義を予定しています。
構想メモ

構想がまとまってはいないが、書く約束はしているもの~

『志賀直哉と奈良芸術村』
 志賀直哉は1925~1938年まで奈良の高畑に住み、そのまわりに作家や画家が集まり、芸術サロンができていた。そこで奈良<天平>芸術が発見されてゆく。そのアーティスト・コロニー(芸術家村)の物語を書いてみたい。
『斜めに橋を架ける-おじさん、おばさん論』
 日経新聞の「プロムナード」に書いたのだが、文化や知識は、親から子へという直線によって継がれるだけでなく、おじさんやおばさんという斜線によって伝がれることが重要ではないかと思う。おじやおばによる文化の伝達によって、異文化が注入され、豊かになるのだ。文化がそれぞれ孤立している現代において、おじさん・おばさんの役割を再評価したい。

まだ漠然としたアイデアだけで、いつか書いてみたいと思っている企画。
止めどなくあるうちの、いくつか~

『ニューヨーク1950年代』
 1920年代のパリに代わって、戦後のニューヨークは世界の先端となった。ビート文学、抽象表現主義のアート、モダン・ジャズの三本の柱によって、ニューヨークを書きたい。
『プルーストの浜辺』
 『プルーストの部屋』とペアになる本として、プルーストと1900年のノルマンディーの浜辺について書きたい。

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